ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

最初から法人で購入した方がよい場合

渡邊浩滋渡邊浩滋

2016/09/30

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

不動産投資を個人で始めようか、最初から法人で始めようか、悩まれる方がいらっしゃいます。 判断すべきポイントを上げてみます。

1.毎年の税金
個人で購入する場合、所得税・住民税(規模によっては個人事業税)の負担があります。

所得税は、給与所得、不動産所得、事業所得などを合算して、税率が課税されます。 超過累進税率なので、所得が高くなれば、高い税率での課税になります。

例えば、給与所得(年収から給与所得控除を控除した後の金額)が900万円を超えるような場合、それに不動産所得が上乗せされるので、不動産所得には、33%の税率(住民税も合わせると43%)で課税されてしまいます。

法人で購入する場合には、法人税・法人事業税・法人住民税の負担があります。

法人の実効税率は、平成28年度(資本金1億円以下の中小法人)で、所得が400万円以下は21.42%、800万円以下は23.20%、800万円超は34.33%で課税されます。

それであれば、法人で不動産を購入することにより、個人で43%で課税を受けるよりも、法人で、21.42%もしくは、23.20%で課税を受けた方が税金が抑えられることになります。

また、給与所得がない方でも、賃貸不動産を増やしていこうと思われる方は、最初から法人で購入した方がよいと考えます。

最初は不動産所得が低くても、物件が増えるごとに、不動産所得も高くなり、高い税率での課税になってしまいます。 そのときになって、法人に賃貸物件を移したいといっても、借入金がある場合には、法人での借り換えが必要となったり、登記費用や不動産取得税などの諸費用がかかったりします。

これらの諸費用は、物件の規模によって異なりますが、数百万円になることもあります。 いずれ法人に移転することになるのであれば、最初から法人で購入した方が費用が抑えられます。

しかし、法人にすることで、税務手続きが複雑になり税理士に依頼する場合の報酬が高くなったり、社会保険に加入しなければならないなど、税金以外のコストが発生する場合がありますので、ご注意ください。

2.相続税
もう一つ、相続税についても考えなければなりません。

個人で購入する場合の相続税の課税対象は、土地建物の評価になります。 それぞれの相続税評価は、建物は固定資産税評価額、土地は原則として路線価で評価するため、購入金額よりも評価額が小さくなることがほとんどです。

法人で購入する場合には、株式(出資)の評価になります。株式の評価をする方法のうち純資産評価は、その会社が所有している土地建物の資産額の評価をします。

その評価は相続税評価額(建物は固定資産税評価額、土地は原則として路線価)での金額を使いますので、個人の場合の評価と変わりません。

しかし、土地建物を取得してから3年以内場合は、相続税評価額ではなく、時価での金額を使わなければならないことになっています。

相続前3年以内に取得した不動産については、法人で取得すると高い評価になる可能性があるため、相続が直近に迫っている方の相続対策では、法人での購入は避けた方がよいかと考えます。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

司法書士・税理士

渡邊浩滋総合事務所。大家さん専門税理士・司法書士。渡邊浩滋総合事務所代表。「行動する大家さんの会(AOA)」発起人。 大学在学中に司法書士試験に合格。大学卒業後総合商社に入社。法務部として契約管理、担保管理、債権回収などを担当。退職後、税理士試験に合格。実家のアパート経営(アパート5棟、全86室)が危機的状況であることが発覚し、経営を立て直すために自ら経営を引き継ぎ、危機的状況から脱出。資産税専門の税理士法人に勤務後、2011年12月独立開業。税理士の視点と大家の視点からアパート経営を支援するために活動中。従来のような確定申告書だけ作成する税理士ではなく、経営・財政・税金の観点から提案をする不動産専門の税理士・司法書士です。 [著書]「税理士が教える節税Q&A」(TAC出版刊)、「大家さんのための超簡単!青色申告」(クリエイティブ ワークステーション)他。 [担当]不動産登記 渡邊浩滋は個人間直接売買において決済完了後に登記手続きを行います。

ページのトップへ

ウチコミ!