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借地権の相続について

岡田一夫岡田一夫

2016/07/28

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地主さんがある人に土地を貸して、その土地の借地人が、建物を所有して居住していたところ、借地人が亡くなったケースで、困った経験が多々あるのではないでしょうか。

【ケース1】借地人が長年地代を滞納したまま死亡したケース
【ケース2】一人暮らしの高齢者が認知症にかかり施設で死亡したケース
【ケース3】相続人がいなかったケース(相続人がいるこれども全員相続放棄をした場合を含む)
いずれの場合も、地主さんにはしばらく、地代が入ってこないことになります。地主さんが積極的に状況を打開しようとすればケース1・2の場合は利害関係人として借地人の相続人調査をし、相手方を特定して、督促、借地権の継続、買取等の手続きをすることになります。

相続財産管理人の選任

ケース3の場合は、借地人の財産は、相続財産法人となりますので、利害関係人として家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任の申立を行うことになります。借地人の戸籍を調べた結果、相続人はいるが行方不明とか生死不明の場合は、不在者財産管理人の選任や失踪宣告の申立が必要になる場合があります。相続財産管理人の選任には予納金として、数十万~100万ぐらいを裁判所に預けることになり、地主さんにとってはかなりの負担になります。このような相続人のいない財産は、一定の手続きを経て、特別縁故者に分与されるか、特別縁故者がいなければ国庫に帰属することになります。借地権の場合は、相続財産管理人が借地権付き建物を売却するか、地主さんに買い取ってもらうことで現金にかえて最終的に国庫に納めることになります。地主さんの立場から見ると、建物の解体費用の負担を条件に、廉価で借地権を返してもらういい機会とも言えます。

死因贈与

死因贈与とは贈与者、受贈者の合意により(※遺贈は単独行為)財産を無償で与えるという内容の契約をし、贈与者が死亡することによって効力が生じる贈与です。 贈与する財産が不動産の場合は、仮登記をするこにより保全することが出来ます。仮登記をすれば100%保全出来る訳ではありませんが、遺言の撤回等に比べると登記が出来る分、保全性が上がります。(登記の目的 始期付所有権移転仮登記 始期:贈与者の死亡)
公正証書で死因贈与契約を作成するのがベスト(受贈者が単独で手続きできる)ですが、私文書で作成するときは、受贈者を執行者として選任し、贈与者が実印で捺印し、且つ贈与者の印鑑証明書を保管することにより、受贈者が単独で名義変更の手続きをすることがが出来ます。贈与者の相続人から印鑑をもらうことなく名義変更出来るところにメリットがあります。

当事務所で取り扱った具体的事例

借地人が死亡したことにより、借地権をめぐって地主さんと争うことも少なくありませんが、当事務所が実際に取り扱った事案の一例です。借地人は父親の代から先代の地主さんから現在の地主さんに亘り、長年土地を借りておられ、地主さんと借地人の関係が極めて良好でした。借地人自身は結婚せずに妻も子供もいない状況でしたので自分が元気なうちだけ今の家に住めればそれでいいというお考えでした。将来、借地人が亡くなった時には、借地人の兄弟姉妹に相続権がありますが、自分が亡くなった後は借地権を地主さんに返還したいという強い思いがありました。そこで、上記で記載いたしました、借地人の死亡を始期とする始期付所有権移転仮登記を建物に登記し、借地人が亡くなった後に、建物の名義を贈与を原因として、地主さんに変更することにより借地権を返還するという事案です。本事案は、生前中に充分に兄弟姉妹に事情を説明したとはいえ、借地人死亡後に、兄弟姉妹から借地権の相続権があることを主張されるリスクがありますが、借地人の思いの実現のためにあえて仮登記をした非常に、稀な事案です!

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この記事を書いた人

司法書士・行政書士

おかだ司法書士 / 行政書士事務所。同志社大学経済学部卒業後、平成4年司法書士試験合格、平成7年独立開業、平成8年行政書士資格取得。 不動産登記、商業登記等の登記業務を中心に、建設業、宅建業、運送業等の許認可業務も取り扱っております。多くの不動産賃貸経営者をクライアントとする税理士事務所の依頼により、相続に伴う財産・事業承継に数多の経験があります。最近では、経営者の高齢化に伴い、いわゆる家族信託スキームを利用した権利の保全・財産承継の業務が増加してきております。 登記業務はどの司法書士に依頼しても成果は同じですが、遺言、信託等の保全業務は「する」か、「しない」かで結果は全く異なります。他の士業と連携し、トータル的に国民の権利保護に寄与できればと考えています。 [担当]不動産登記 岡田一夫は個人間直接売買において決済完了後に登記手続きを行います。

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