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事故物件について

森田雅也森田雅也

2016/06/27

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今回は、皆さん一度は耳にしたことがある事故物件について説明していきたいと思います。 そもそも事故物件とは、当該建物内において、人の死亡が関わる事件・事故が発生した物件のことをいいます。ただし、孤独死や自然死は基本的には法律上の告知義務がありません。 この事故物件は、不動産投資に際して2つの場面においてリスクがつきまといます。

1つめのリスク・・・不動産購入時
1つめのリスクは、不動産購入時に購入しようとしている物件が事故物件に該当しないかの確認をする必要となります。なぜならば、事故物件の不動産には、心理的瑕疵(通常人からみて心理的に嫌悪すべき事由)が認められるとされており、賃借人が入りにくいという性質があります。せっかく購入した不動産に賃借人がみつからなければ、賃料収入が入ってきません。

もちろん、法律においても、売主は買主に対し、事故物件であることを告知する義務が定められています。

しかし、前述のように自然死や、孤独死については基本的には告知義務がないとされています。また、事故物件となった後に、他の居住者が一定期間居住して何も問題が無かった場合などにも心理的瑕疵は緩和されるという趣旨により告知義務はなくなると考えられています。

したがって、不動産購入時に法律で規定されている告知義務がなかったという点のみをもって事故物件ではないと判断してしまうと、後々賃借希望者がいても、契約締結まで発展しなかったり、賃貸借契約を締結しても、すぐに引っ越してしまい賃料収入が得られなくなるというリスクがあります。
そこで、不動産購入時に買主自身で購入しようとしている物件が事故物件ではないかの調査をきちんと行っておいた方がよいといえるでしょう。

2つ目のリスク・・・・賃貸期間中
2つ目のリスクは、購入した不動産を実際に貸している最中に、賃借人が事件・事故に巻き込まれ死亡した場合です。すなわち、自己所有建物が事故物件化してしまった場合です。 事故物件になった場合には、今度は賃貸人であるあなたに告知義務が生じます。事故物件に該当するとやはり賃料収入が少なくなる可能性があります。 事故物件になるのを未然に防ぐのは、事件・事故を予想して防がなければならず非現実的です。

しかし、泣き寝入りする必要もなく、賃貸人は加害者、遺族に対して不法行為による損害賠償を請求することができます。過去の裁判例としては、借上げ社宅として会社に賃貸していたところ、住居者の従業員が自殺したため、会社に2年間の賃料差額相当分の支払いを認めた事案や、賃借人が自殺したため、1年間の賃貸不能期間、及び賃料が半額となる2年間の契約期間を想定し、賃料差額分の支払いを認めた事案などがあります。これに対し、自然死の場合には賃借人に故意・過失があるとみなすことができないので、特段の事情が無い限り、遺族や連帯保証人は損害を負う必要はなく、原状回復義務のみを負うと考えられています。

以上の点から、不動産投資における事故物件が持つリスクについての注意点は、よく調べてから購入する、購入した後に万が一賃貸人が亡くなってしまった場合には状況にもよりますが、遺族に対して損害賠償請求が可能ということも頭に入れておくといいかもしれません。

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この記事を書いた人

弁護士

弁護士法人Authense法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)。 上智大学法科大学院卒業後、中央総合法律事務所を経て、弁護士法人法律事務所オーセンスに入所。入所後は不動産法務部門の立ち上げに尽力し、不動産オーナーの弁護士として、主に様々な不動産問題を取り扱い、年間解決実績1,500件超と業界トップクラスの実績を残す。不動産業界の顧問も多く抱えている。一方、近年では不動産と関係が強い相続部門を立ち上げ、年1,000件を超える相続問題を取り扱い、多数のトラブル事案を解決。 不動産×相続という多面的法律視点で、相続・遺言セミナー、執筆活動なども多数行っている。 [著書]「自分でできる家賃滞納対策 自主管理型一般家主の賃貸経営バイブル」(中央経済社)。 [担当]契約書作成 森田雅也は個人間直接売買において契約書の作成を行います。

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