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法定耐用年数を超過した物件について(1/2ページ)

皆川聡皆川聡

2016/05/31

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不動産の物件調査や住宅診断などを担当させていただきます不動産鑑定士の皆川聡と申します。

今回はまず初回ということで、

「簡単な自己紹介」、
「最近評価した案件」及び
「行政側の後押し」
について書かせていただきます。

1.簡単な自己紹介
私は、元板前の不動産鑑定士で、また、住宅診断もしております。 30才直前まで板前をしておりました。 板前時代は、食材をどのように調理して、お客様へ最善のご提供をするかを常に追求しておりました。

現在、不動産鑑定士として、不動産をどのように調理して、お客様へ最善または次善策などをご提案させていただくかを常に追究しております。 つまり、不動産の目利きのみではなく、食材の目利きもできます。というイメージでしょうか。

ただ、時の流れが早いもので、最近では、投資運営の形態について、いろいろな特殊な手法などがありますが、それらの手法にはリスク等も介在します。 活用できるところは活用させていただき、最善ものを作っていけたらと考えております。

2.最近評価した案件
そもそも、みなさん、木造アパート築22年超の投資物件はいかがでしょうか? 木造戸建やアパートの法定耐用年数は22年です。 ですので、一般的にローンもあまり望めない。 購入しても何か不具合が生じて思わぬ出費が!!減価償却費も見込めません。

最近評価した案件の中に、都内の駅前木造築50年超の賃貸店舗があります。 その評価では、収益価格が積算価格よりも2割増しで算出できました。 その主な理由として、以下の2点が挙げられます。

駅前狭小の区画割りされた店舗群のため坪単価が相対的に割高、総額も高くなり、中長期修繕計画を反映させた相対的に割高な資本的支出でもってしても収益価格が高くなったこと。
外壁クラック、外壁塗装等の定期的なメンテナンスは行ってはいるものの、耐震補強などが施されておらず、経済的残存耐用年数も残り僅かになり、建物価格が低く、最終的に積算価格も低くなったこと。
以上が主な要因です。

鑑定評価では、一般的に、賃貸物件については収益価格で決定されます。 ですので、本件については、積算価格の2割増しの収益価格で鑑定評価額を決定しております。 金融機関の方では、その鑑定評価額をそのまま融資できるか否かについて、その銀行側の内部規定によります。

本件の最終的な着地点として、比較的積極的な金融機関様から、収益価格に近い価格で、期間も30年で、融資が決定しました。

但し、その前提として、定期的なメンテナンスが施されていること以外に、今後の耐震補強の必要性について追記し、さらに、自治体が旧耐震の木造住宅等については、耐震改修の助成を推奨していることなども意見書へ追記させていただきました。

3.行政側の後押し
行政側の後押しとしては、まず、国道交通省が挙げられます。 国土交通省では、「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル」ということで、以下の5点を掲げており、

建物評価の改善と市場への定着
良質な住宅ストックの形成とその流通を促進するための環境整備
中古住宅市場活性化に資する金融面の取組
戸建て賃貸住宅市場の活性化
地域政策との連携
中古住宅市場の活性化を後押ししております。 基本的な流れとしましては、住宅診断(ホームインスペクション)を付け、きちんとメンテナンスを施している建物については、法定耐用年数を超過した実質的な期待耐用年数で価値評価をすることを推奨しております。

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この記事を書いた人

不動産鑑定士

株式会社あおい不動産コンサルティング。大手不動産鑑定会社、株式会社三友システムアプレイザルに従事し、その後独立。 不動産鑑定業務が主ですが、住宅診断(ホームインスペクション)も対応しております。財務諸表・会社法・税務等についても、スキームに応じた鑑定評価の立ち位置を認識しております。相続・事業承継関係等にも勿論対応させて頂きます。<br> 賃料の評価・査定につきましても、数多くの案件を携わっており、得意にしております。 [担当]物件調査 皆川聡は個人間直接売買において物件調査により権利関係の確認をします。 個人間直接売買における皆川聡の詳しい役割はこちら

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